「精確」「迅速」「丁寧」が合言葉
医師の信頼得て幅広く事業育成
2024年に創業50年を迎えるアルプ。1974年の創業以来、「まごころで健康を」をモットーに掲げ、臨床検査、食品衛生検査、調剤薬局、病理検査と事業の柱を次々と育て、地域の健康と安全を多角的に支えてきました。アルプと臨床検査部門を中心に連携する藤聖会・親和会の藤井久丈理事長が、同社の古賀美純社長と語り合いました。
株式会社アルプ代表取締役社長
古賀 美純 氏
1993年 横浜国立大学 工学部物質工学科 卒業
日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社 入社
1995年 同社 退職
株式会社 アルプ 入社
1997年 株式会社 アルプ 取締役に就任
1998年 株式会社 アルプ 常務取締役に就任
2003年 株式会社 アルプ 専務取締役に就任
2011年 株式会社 アルプ 代表取締役副社長に就任
2013年 株式会社 アルプ 代表取締役社長に就任
医療法人社団藤聖会
親和会理事長
藤井 久丈 氏
1980年 金沢大学医学部卒業、同大学第2外科入局
1985年 同大学院医学専攻科卒業(医学博士)後、
北陸3県の関連病院に勤務
1989年 医療法人社団藤聖会八尾総合病院院長就任
2001年 医療法人社団藤聖会理事長就任後、
女性クリニックWe富山、金沢メディカルステーションヴィーク、
富山サイバーナイフセンターなどを開設。
2012年 医療法人社団親和会理事長併任後、チューリップ長江病院、
富山西リハビリテーション病院、富山西総合病院を開設
2021年 社会福祉法人慶寿会理事長併任
臨床検査会社の草分け
2024年に創業50年
藤井
「アルプ」と聞いて、一般の方は調剤薬局を思い浮かべる人が多いようですが、我々医者の間では臨床検査がメーンの会社という認識です。私たち藤聖会グループも御社の臨床検査に随分とお世話になっています。
古賀
私どもこそ、大変お世話になっております。ご認識の通り、弊社は私の父で現会長の古賀克己が、1974年に「北陸医学臨床検査センター」を創業したことに端を発しており、臨床検査が会社の礎です。
患者様の血液や尿、細胞組織などを検査・分析し、病気を診断するためのデータとして活用する臨床検査は、今でこそ日常的に行われていますが、弊社がセンターを立ち上げた当時は、医療機関にもあまり認知されていないニッチな市場でした。
充実した集配体制
迅速なPCR検査に貢献
藤井
臨床検査会社の草分けだったのですね。臨床検査が一躍、脚光を浴びるようになったのは、皮肉なことですが、やはりコロナ禍でしょうね。私たちのグループでは、とりわけJR金沢駅構内で運営する「金沢メディカルステーションヴィーク」が、PCR検査で全面的に御社に協力していただきました。ヴィークは場所柄、働き盛りのビジネスマンの利用が多いこともあり、自分の健康状態に関心が高く、検査結果を少しでも早く知りたいというニーズが大きい施設です。コロナ禍の間、アルプさんは1日に3回も検体を集配してくださり、検査室は日曜以外の毎日24時間フル回転で稼働していらっしゃいます。1分でも早く結果を出してあげたい、という企業スタンスに、本当に助けられました。
古賀
そうおっしゃっていただけると励みになります。
藤井
グループの他のクリニックや富山西総合病院もアルプさんのお世話になっています。コロナ禍の特に初期は、富山市内の公的病院は紹介状がないと受診できない、一方で、地域のクリニックには発熱のある方はご遠慮を…というところも少なくなかったので、当院に発熱症状のある患者さんが押し寄せました。多い時には1日に100人を超える感染疑いの方が来院されていたと思います。毎日大量の検体を出させていただきましたが、アルプさんのおかげで滞りなく診断ができました。地域の感染流行拡大防止にも貢献できたのではないかと考えています。
古賀
うれしいお言葉です。コロナのような2類感染症のパンデミックは私どもも初めての経験で、責任重大な検査を引き受けてよいのか、やらない方が良いのか、随分、迷いました。しかし、社会が混乱し、多くの人が不安におびえる状況を鑑みて、やはりやるしかない、と決断しました。コロナ禍の前からPCR検査機器を結核などの判定用に揃えてあったことも、決断を後押ししました。
藤井
高度な処理能力のPCR検査機器を所有する企業は、御社を含めわずかしかありません。不安を抱えながらも実行に踏み切られたのも、地域の健康・安全を守りたいという「まごころ」からだと推察します。一方で、夜も徹して24時間、作業し続けるための人員の確保も、並大抵のことではないと思います。
古賀
はい、大変でした(笑)。検査要員に加え、集配スタッフも相当数を確保しなければなりません。弊社は3交代制ですが、それでも人員が全く足らず、薬局や食品関係のスタッフもほぼ全員を投入しました。また、弊社は女性社員が多く、小さな子を持つ社員の中には夜勤に抵抗を感じる人も少なくありませんでした。そういった人たちには私から説明して理解を得るように努めました。
藤井
社長自ら説得して回られたのですね。初めてのことだらけで、感染の危険性も含め不安に感じる社員も多かったと思いますが、古賀社長はそういう方たちのメンタル面の支えにもなっていらっしゃったのですね。
「検査の肝は集配の強化」
コロナ禍で読みが的中
古賀
私にできることはそれぐらいでしたので(笑)。藤井先生にお褒めいただいた迅速性に関連して申し上げますと、私は10年前に社長に就いた際、検査の肝は(医療機関に検体を)取りに行くスピードだと思いました。検査機器は日進月歩の勢いで更新されて、どんどん早く正確になっています。その機械でも出来ない部分が集配であり、そこをしっかりやらないといけない、と思ったのです。集配拠点を増設して人員を増やし、以前は夜間に集中していた検体の持ち込みを、24時間受け付けるようにしました。社長就任以来、集配速度の向上に力を入れてきたことが、奇しくも今回のコロナ禍で、大いに役立ちました。
藤井
検査時間が短縮され、結果を医療機関へ送るのも瞬時にできるようになりましたが、そういった「文明の利器」に頼り切るのではなく、より検査速度を上げるために、自分たちができることは何か、ということを、コロナ禍以前から考えていらっしゃったのですね。先見の明がおありだったのだと思います。
古賀
優れた先見性で数々の先駆的な取り組みをされている藤井先生から、そうおっしゃっていただけるとは光栄です。
臨床検査での医師との信頼
薬局など他事業進出の基盤に
藤井
アルプさんは検査結果が出たらリアルタイムで医師が確認できるシステムもいち早く整備されています。
古賀
はい。医療機関がインターネットを活用して検査結果をリアルタイムで確認できるシステム「R―Web」で、ネットに接続できる環境があれば、いつでもどこでも、検査結果を閲覧することができます。
藤井
御社はそういった丁寧なサービスを通じて医療機関を幅広くサポートし、多くの医師の信頼を得ていらっしゃる。
古賀
ありがとうございます。弊社の臨床検査事業は「精確」「迅速」「丁寧」を合言葉にしています。創業から屋台骨として経営を支えてきた臨床検査事業で構築した先生方との信頼関係が、調剤薬局をはじめとする他の事業に進出する基盤になりました。
北陸の調剤薬局のパイオニア
医薬分業の推進を先導
藤井
その調剤薬局でもお付き合いさせていただいています。御社が調剤薬局事業を始めたのは何年前でしょうか。
古賀
1999年ですので、2024年でちょうど25年になります。
藤井
その当時、調剤薬局はまだ少なかったですよね。
古賀
ほとんどが院内調剤でした。当時の都道府県別医薬分業率は石川県が6・4%で全国最下位だったのです。次いで福井、富山が低く、北陸3県が医薬分業率のワースト3を占めていました。
藤井
雨や雪の日が多い北陸の気候も影響していたのでしょうか。
古賀
私の父(古賀克己会長)も当初は「院外は北陸の気候に合わない」と事業開始に難色を示していましたが、全国的な流れにも押されて99年3月に第1店舗を出店しました。全くノウハウもない中でのスタートとなり、患者さんも院外薬局に馴染みがないこともあって、案の定、第1店舗は失敗に終わりました。
藤井
そうでしたか。パイオニアならではのご苦労がおありだったのですね。
古賀
弊社は昔も今も、医療機関の近くにしか店舗を出しておりません。先生方との信頼関係で成り立っている企業ですので、医療機関の隣接地以外には出店しない方針を貫いております。
藤井
現在は何店舗になりましたか。
古賀
この秋にちょうど50店舗目を出店しました。
地域の「かかりつけ薬局」
まごころで「患者様」と接し
藤井
医療機関と目と鼻の先にある薬局は、普段からお互いにコミュニケーションを取りやすいですよね。
古賀
はい。弊社も定期的に医師や医療スタッフの方々との交流の場を設け、治療方針や患者様の情報を共有しています。患者様の中には先生方には言えないことを薬剤師に打ち明ける方もいらっしゃいます。また、地域の皆様からの依頼を受け、薬の正しいのみ方などをテーマにした講演会も開いています。地域の「かかりつけ薬局」として、少しでも皆さんの健康に役立てれば幸いです。
藤井
地域に出向いて服薬指導を行ったり、苦情や相談事も受け付けてくださったりしているとは、まさに「まごころで健康を」ですね。ところで北陸の医薬分業率は現在、どれぐらい進みましたか。
古賀
2022年度で富山が70,4%、石川は69%で、全国平均にかなり近づいています。福井は59,3%です。
藤井
御社が先導役となり、北陸の医薬分業の推進に大きく貢献してきたことを示すデータだと思いますよ。
古賀
そのように受け止めていただけると、ありがたいです。
藤井
アルプさんは私の大学の同級生の小田惠夫先生が所長を務める病理研究所も運営されています。さらに、食品衛生検査も行っていらっしゃる。担当領域のすそ野は広いのですが、「地域の健康・安全管理」という点で全ての部門がつながっています。病院とともに地域医療を支える縁の下の力持ちのような存在ですね。これからもサポートをお願いします。
古賀
こちらこそ、よろしくお願い致します。本日はありがとうございました。